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2013年 11月 28日
最近仕事の話題をしてなかった。
この2週間でとあるマウスが用意できて、後輩とともに実験を重ねてフィーバーが続いている。予算なしでもできる実験だけだが。ラボの10年に渡る積年の課題と因縁と怨念と祟りに光明を与えるデータがでつつあるので、ボスはこの10年で一番の成果だとすっかり舞い上がってしまい昨日は仕事中(午後4時)に全員拉致して飲みに連れて行かれた。6年近くいて初めての光景だ。 しかしいくらボスが舞い上がってもぼくと後輩だけは頭がクールでないといけない。分野の誰もが知るnastyなイメージの遺伝子に関係するので、ここで先走るとラボは本当に潰れてしまう、と重ね重ね後輩には注意している。ボスはThis is definitive answer!と言ってヒートアップしているけど、引き込まれないように、と。ラボに来て半年も満たない後輩でも現状がよくわかっている。 なのでしつこいくらいリピートと実験を重ねる。 うちのラボがニッシェ業界から手を引きだしてるのは、その遺伝子をめぐる論争で敗北して以来後遺症にずっと苦しめられていることが大きい。 よしんばこのデータがまとまったとしても、reputationを気にしてdecentなジャーナルはどこも採用してくれないだろうし(既にそういう声明をCell Stem Cellから受けたことがある "We are not going to take any more related topics about ---")、10年間ほったらかしで何を今更と外から怒られるかもしれない。10年間続いた因縁にひっそりと終止符をうって金輪際忘れてしまうのがいいだろう。 ■
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by sugirioblog
| 2013-11-28 20:52
2013年 11月 28日
ハエ論文の余韻が残っているうちに、妄想を出し切ってしまおう。
ハエの体は良い意味でテキトーな感じがする。あくまでも妄想です(汗) 有名な変異体にHox変異で起こるバイソラックスがあるけど、初めて見たときは度肝を抜かれた。「なんで生きてるねん!」胸郭が2重に増えてる。もし未来から邪悪なドラえもんがやってきてぼくにバイソラックスビーム(?)なんて浴びせると、即死できる自信がある。心臓が2連結のせいで血が送れないか心破裂、よしんば循環できても2倍の血圧が脳血管を一瞬で粉砕させる、肺はおしくらまんじゅう状態のせいできっと縮めないから呼吸できないだろうな。。。最悪即死、よくて数分間苦しみぬいてから死ぬような合併症がいくつも待ち構えている。ハエも元気なくなるかもしれないけど、人間で起こるようなドラマチックな死に様は披露してくれないだろう。人間で実験はできないけど、マウスでHoxレベルのマスター遺伝子を変異させるとアッサリ胎生致死になる、あるいはHoxのようにサブファミリーの遺伝子(保険)をいっぱい増やすことでバイソラックスのような悲劇にならなくしてるのではなかろうか。 Pax6強制発現で全身に眼ができるハエもいたけど、あれも人間で起こると剥き出しの眼が痛くて歩けないだろう。 何が言いたいかというと、ハエはもしかすると細胞の可塑性や組織の適応度が高いんじゃないかな。もし自分の脳が寝てる間にリプログラミングされてすっかり胃袋に代わってしまってたら、永遠に目覚めないけど、ハエならもうちょっと頑張ってくれるかもしれない。人間の体は複雑に発達したせいで脆くなってしまった。だから進化圧(?)のおかげで人間の細胞はidentityを変わりにくくするセーフティ機構が働いてる。それはHoxのように重複コピーで保険をいっぱいかけたり、epigeneticな機構でcell stateをガチガチに固めてしまったり、ヤバそうな細胞を見つけ次第に瞬殺したり。枚挙にあげればキリがないだろう。identityを破るには転写因子をいくつもぶちこむ必要があるほど、「固い」。ハエの細胞はちょっとくらいidentityが変わろうが大丈夫、逆に言えば、セーフティ機構が発達してないのでなおさら変わりやすい。障害や刺激に応じてリプログラミングが殊更おこりやすいかもしれない。 あくまで妄想でした。 追記。 人間の体も、セルラインに単離すると大雑把にふるまうような。組織中の細胞と単離して培養した細胞でクロマチンの状態は大きく変わるだろうな。その比較がセーフティ機構のepigeneticレベルでの説明につながるのかもしれない。遺伝子いっぱい重複がどれくらい効いてるかテストするには、染色体工学を駆使してマウスで遺伝子のサブファミリーどっさり削ったり、ハエにいっぱいサブファミリーつっこむか。。。これは微妙な実験だ。 ■
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by sugirioblog
| 2013-11-28 11:15
2013年 11月 27日
前から気になってた論文。
ハエを使った研究で、嗅覚情報がGABA神経内分泌を介して造血細胞の維持をする。すっごいセクシーなストーリーなので、今日ようやく時間を見つけて読んだ。読んだといっても、データの質の評価まではできない。ハエ研究所に6年近くもいるのに、マウスばかり研究してるせいでハエのデータの良し悪しは全くわからない。なのでデータがどうたらを語る資格は自分にはないので、あくまでも感想+妄想。 1.ハエとマウスの造血の相違。 いつもぼくが扱ってるマウス造血細胞は(造血屋さんに怒られるくらい大雑把にただのLin陰性細胞と規定しても)骨髄の5%くらいしか存在しないレアな細胞だ。ハエの場合はどうだろう。この論文の図1を見ると、どうも50%くらいは造血細胞だそうだ。10倍の違い。めっちゃ多い。 マウスの造血細胞は赤血球、白血球、リンパ球、血小板といろいろ分化するけど、ハエの造血細胞は白血球になるらしい。マウスに比べるとかなりシンプルな系だ。 分子制御機構は似ているところもあるらしい。ただしこれはただでさえ限られたバリエーションの遺伝子が発生の部品としていろんな種や臓器で使いまわされてることから、モレキュラーなところで似ていても不思議ではないかもしれない。 ニッシェの制御機構は見た感じ思いっきり違う。マウスの造血細胞はかなりヘテロで、それに合わせてニッシェも多様化していて、門外漢にはしちめんどくさいほどややこしい。ハエはなんかちょびっとした細胞の集団が端っこに付いてるだけだ。マウスのように何年も保つような幹細胞は要らないから、すぐに使いバーンアウトする前駆細胞がいっぱいあればハエの一生(一月ほど)間に合うのだろか。そうすれば、造血細胞が50%も占めるのが納得いく。ということはマウスは造血幹細胞を分裂しないようブレーキするquiescent nicheが注目されてるけど、ハエは細胞をバンバン分裂させるactivating nicheがメインだろうか。 2.嗅覚による造血制御の意義。 ハエを嗅覚がほとんど刺激されない環境で育てると、造血細胞が失われていくらしい。この論文のsignificanceのpointはここだと思う。ハエは外部情報のほとんどを嗅覚に頼っているのだろうか?そうだとすると脳へのインプットの中でも嗅覚がクリティカルに効いているのかもしれない。チューチューも嗅覚が大事だ。人間は視覚への依存がもっと大きい。チューチューで似たような「嗅覚‐造血」フォロー論文が出るかもしれない。生まれてすぐ目や鼻をふさいだマウスの造血はどうなるのだろうか?しかし、それらの知見がどこまで人間でも通じるかというと不明だ。NSGにヒトHSCを移植したゼノグラフトモデルでも、入れ物がマウスだからなあ。もっと視点を大きくして「脳‐造血」ならヒトでも十分にありうるだろう。脳が直接ニッシェ細胞に神経接合するのか、今回の論文のように神経内分泌を介するのか、代謝や免疫系を介するのか。どれも有りうるだろう。 3.Conceptual advance 9月のCSHLでもハエの幹細胞トークが多かったけど、ハエは現象論でコンセプトがドーンと突き抜けるのがすごい。全てのトークが、いかにびっくりするコンセプトを出そうかと苦心しているように感じられた。今回の仕事のコンセプトも、チューチューやヒトの造血屋さんをびっくりさせるのに十分だ。脳が造血ニッシェを制御する可能性は、Nestin-GFP細胞やシュワン細胞や交感神経のすばらしい仕事を見れば予想が着くけど、それを証明するのが大変だった。チューチューで脳‐造血ニッシェの境地に一番近いのはPFラボだろう。彼もそういえば臨床経験はほとんどないけどMDだった。というわけで臓器ネットワークの知識はあるだろう。 百戦錬磨の臨床家の経験と勘とまでいかなくとも、医学生程度の初等生理学+病理学の知識があれば、存外ハエ分野でブイブイいわせられるのかもしれない。 ■
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by sugirioblog
| 2013-11-27 12:18
2013年 11月 27日
Xistが最近カッコよく思えてきた。門外漢がそう思うんだから、もうこの分野はホットすぎて手が出せないだろうけど。あちー。幹細胞ニッシェもだが、素人目におもしろく見える分野は大概そんなだ。
染色体工学とでも言うのだろうか。ZFNでectpopicにぶちこんだXistがspecificに染色体をサイレンスできるという。X染色体に限らず、21番染色体でもできるんだから、このspecificityは謎が深い。高次構造をとるときに他の染色体に飛び火しないのはなぜだろうか。なかなかイケてる。 Xistとか我々オスに関係ないと思って心の壁がどうしてもあったけど、これで親近感がもてた。オスの細胞でもTetOでXistを無理やり発現させると、Barr body(不活化X染色体の塊)らしきものができるそう。XistのRAPをすると発現後数時間以内でメスのX染色体のようなXist binding patternが得られる。クールだ。ということは、メス特異的なファクターが必須なわけではないのだな。 これからもXistはlncRNAのモデルとして染色体の高次構造やスーパーエンハンサー制御的なネタで熱く研究が進んでいくんだろうなと思う。 ■
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by sugirioblog
| 2013-11-27 08:54
2013年 11月 25日
CellやCell Stem Cellのエディターと交渉した経験。
リジェクトされた後、アメリカではボスが雑誌のエディターにごねて苦情の電話入れたり嫌がらせメールを送ることがある。Cellクラスでもラボのパワーによっては著効するという。うちのラボはJBCならそれができるらしい。 "I think this paper is worthwhile to publish in Cell! ガチャッ(電話)"の一言で通した逸話(ノーベル賞受賞者)もあるが、普通はそんなダークサイドな離れ業はできない。なので地道に新データを見せたりロジカルに誘導することになる。 その中で、これは交渉でワークしなかったなあ、という例をひとつ。 新データをpptファイルでエディターに送ったケース。毎回エディターは目も通していなかった。競合先の論文が出た直後にCell Stem Cellのエディターから"エディターがレビューアー4としてふるまった辛辣なコメント"をもらったけど、その3日前に送っていた新データのpptなんて目もくれてないのは明らかだった。こういう事例がCellで2回、Cell Stem Cellで1回あった。 やはり論文+リバタルレターの形で投稿しないと見てくれない。 ちなみにCellはリジェクトされると再投稿はエディターのお許しがないとできない。electronic submissionのページがブロックされてしまうのだ。なので、エディターにメールで交渉してデータを見せたい場合、pptは無視されるので、メール本文に論文本体を添付する方が良いだろうか。 追記。 再投稿のお許しをエディターに請うたとき、やはりpptで新データを送ったら梨の礫だった。「これ再投稿したいねん」て論文本体とリバタルレターを送るべきだったのかもしれない。 ■
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by sugirioblog
| 2013-11-25 08:36
2013年 11月 24日
競合に負けた悔しい思いは一生続くんだな、とその前兆を感じた。同業者が皆無のここではそんな実感はあまりないけど、場所が変われば風がビュンビュン吹いていることを知った。
ずっと鬱屈している状況は良くないけど、今はボケないように淡々とカレンダーにバツをつけていくのみ。 この一年間の教訓は大きい。自分の研究者人生をシェイプするだろう。 ■
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by sugirioblog
| 2013-11-24 03:54
2013年 11月 21日
勇気のいる発言だ。個人的には評価したい。記事の内容は、下手くそが追試したせいで再現できないというのはいかがなものか、というオピニオンだ。
哺乳類個体や3Dの組織培養のように非常にテッキーな実験系は、ちょっとした手技やサンプルのコンディションの違いのせいで再現できなかったりする。ぼくらの卑近な例では、シングルセルの移植やオーガノイド培養形成だろう。実験そのものが失敗したりする。 年季の入ったシングルセル移植者にしかできないことを昨日今日ラボに入ったばかりの若造がまねできるかというと、ノーだろう。 培養細胞はfounderとpassageを繰り返したものでは性質が違うなんてざらだ。この場合は単に実験失敗よりもタチが悪い。記事でも同一のヒト乳腺セルラインがオリジナルのラボからもらうかストックセンターからもらうかで同じアッセイに対する結果が逆になる例を示している。そういえばPC12神経セルラインでも似たような話を聞いたことがある。伸びたり伸びなかったり。 しかし手技の難しさ、系の脆さが一部の適当な研究者にとって「追試できなくてもいいもん」という言い訳になってしまうと怖い。現に手技の難しさに逃げ込む例を見てきた。マジックハンドとか言い出すともう眉唾に聞こえる。やはりサイエンスはシンプルに実証できる系によってappreciateされるべきだ。 思い過ごしだろうけど、本文途中の細胞の染色像、なんだか細胞の周りだけ色合いが違うような。浮かんでるからそう見えるのか。 追記。 記事の後半で追試がうまくいかない場合はオリジナルのラボから人を招くかこちらから派遣してでも実験を学ぶのに賛成だ。テッキーになるほど、文字で書かれただけのプロトコルでは伝えきれない超微妙な匙加減なんてものは十分に存在しうる。極端な話、そこの水でないと結果が出なかったり。ミリQなのに都市によってES細胞の体調が変わるなんて話を昔聞いた。なんでもKOマウス作りの効率=一番stringentなpluripotency assayに影響するそう。 ■
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by sugirioblog
| 2013-11-21 07:03
2013年 11月 20日
9つのタイプのPI。あなたのPIはどれだろう。この絵は良く描けてるなあ。まるで見てきたようだ。
周りを見ると、Laid-backもDemi-GodもSlave driverもControl freakもいる。うちのボスはScience wonkだろうか。一瞬だけControl freakと働いたこともあるけど、あれはホントに大変だ。。。この絵そのままやん。 PI以下のラボメンバーをタイプ分けしたらどうなるだろうか?InvaderやBrown noserとか。周りにいてヤバいのはこの2つだろう。 追記。頭がいい(クレバー)のがInvader(他人の仕事を奪う)、頭が悪いのがCrasher(他人の仕事を壊す)。まあcrasherさんも限られた労働(9時5時)で自分の仕事の注目度を上げたいから他人の潰すんだって。そこそこクレバーだ。 ■
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by sugirioblog
| 2013-11-20 11:40
2013年 11月 19日
なかなかおもしろい。
マウスは普通25度で飼うけど、実は30度の方が適温らしい。体のちっこいマウスにとっては25度は寒いらしい。30度だと余分な熱産生が要らないのでストレスが少ないらしい。例えば免疫機能が影響されるそうだ。 問題は、30度ではマウステクが汗だくで働かないといけないし、マウスの飲量尿量がふえるのでケージ交換が更に頻繁になること。またリッターの数も減るからサンプルをそろえるのが大変だ。 ■
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by sugirioblog
| 2013-11-19 06:12
2013年 11月 18日
限られたデータでデカい話をぶち上げるという論文のスタイル。時の試練を経て後に証明され、先駆的な予言論文として生き残るものもあれば、ただのフライングで後に追試された結果爆死するものも多い。
前者と後者の決定的な違いは何だろう。センスの違いだろうか。固執することとは違う。自分はまだ前者を肌で感じたことがないから何とも言えない。 研究者は誰しも自分の中に「ワールド」があるだろうけど、それが妄想と(データがこうあってほしいという)願望で補完された継ぎはぎだらけの偶像ではいけない。危険信号だ。 テッキーにならず誰でも試せる実験系がそんな偶像を壊す手段だ。 マウスの遺伝学を使ってvivoであれこれ推測する仕事には、一流誌においても(だからこそ)大言壮語な論文も見られる。バンドで白黒つかない世界をごにょごにょ言っても通じる曖昧さのせいだろう。実証の過程がはっきりしない。 例えば、発現パターン(スタート地点)とノックアウトの結果(ゴール)のデータしかないのに、その間に起った現象をさも見てきたかのように論じる。その間を埋める断片的なピースは、行き当たりばったり実験のクラウド状に散在してるデータを辻褄あうようフランケンシュタインした代物だったり。解決するには、ライブイメージングが実際の過程を埋める大事な実験のひとつになるだろう。遺伝学的レスキュー実験もロジックを建てるひとつだ。 造血ニッシェの業界も、遅ればせながらライブイメージングと遺伝学的レスキューが導入されている。HHMIクラスのラボでないとできないんじゃないかというCre factory実験に加えてだから、業界をリードできるラボは更に限られてくるだろう。うちのラボも既に別分野にシフトしつつある。このシフティングは今年Nが出たことからも成功しつつあるけど、次の弾が厳しい。あっちの業界も激戦区だし、またまたSMラボの影が見え隠れする。ラボと予算の規模からして勝ち目がないので、同じことをしていてはニッシェ紛争の二の舞になってしまいそうだ。 ■
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by sugirioblog
| 2013-11-18 16:30
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