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2015年 12月 09日
Svante Paabo.
邦題 ネアンデルタール人は私たちと交配した 内容については割愛。邦題が一言で表している。最近の方向性も含めてもっと詳細を知りたいなら、著者のCellのレビューにある。 それよりも、競争の激しい大規模プロジェクトを牽引する科学者のロールモデルとしてこの本の感想がある。ボストンにいる同様のPI(たとえばGDも)、その中でもトップクラスと同じ像だ。 血統 父はプロスタグランジンの発見で知られるノーベル医学生理学受賞者。Svanteがそれを振りかざす場面はないけど、彼のキャリア形成に影響を及ぼしているのは明らかだ。医学部の学生の頃から研究をし、当時の隠しプロジェクト(太古のサンプルからのDNA抽出)が彼のキャリアそのものになった。 ネットワーキング 特筆すべき。スウェーデン出身でドイツに拠点を持つ。化石資料の採取には博物館学芸員とのネットワークが必須。時には化石を無傷で保存したい側からの邪魔すら入る。それらを国際的にクリアする過程を医学生時代から鍛えている。邪魔が入った場合、とりあえず問題を大きくしてかかわる人々を増やす、というストラテジーは共感した。この「やり手」はネアンデルタール人のゲノム解読というビッグプロジェクト(多国籍多ラボにまたがるコンソーシアム)を牽引していく際にも発揮される。後に次世代シークエンスにかかる500万ドルを工面する際も、すごかった。普通ならNIHグラントなどを書いてビクビクしながら成否を祈るけれど、Svanteは大物メンターに電話を入れ、特設のイノベーショングラントへの「招待」をとりつける。そう、書けば受かる状況にもっていく。そして少し多く600万ドルゲット。内にこもらず外交的にコラボを形成し、時には手を切り、あちこち股にかけるSvanteの姿は医学生時代から描かれている。 雑誌エディターとのネットワーク Cell Nature Scienceの3誌は全ておさえてる。エディターの電話番号を知っていて、個人的に電話もできるしメールもできる。基本、論文を書く前にエディターが「ネアンデルタールゲノムの論文ほしい」と催促する、投稿時は特別に特急プロセスで査読。ボストンでよく聞く話が生生しく、当然のように繰り広げられている。 競争 これまでのコラボレーターが翌日から競争相手になる。後半Svanteを最も脅かした相手は、前半のコラボレーターだ。それも自然と競争相手になったのではなく、Svanteの研究の進展のために、避けられない事態としてコラボを切る(=今この時点から競争相手になる)ことになったからだ。 アグレッシヴ 描写の端々に伝わってくる。競争的かつ厳密な科学者。ライバルとは徹底的に戦う。特に一時期流行した恐竜のDNAのPCRクローニング合戦のような「(一部の科学的に厳密でない人々のもつ)やっかいな嗜好」に対して「PCRのポリス」を演じることで攻撃していった。 技術革新にのる これはボストンの競争的なPIにも共通で見られる。PCR→バクテリアクローニング→次世代ゲノムシークエンスと転々とその時点で最新最善最速の技術に乗り換えてきた。次世代シークエンスに移ってからも落ち着くことなく、当初手を組んでいた会社から、今やだれもが知る勝ち組企業イルミナに乗り換えている。そのほうが解析が早かったから。 厳密さ 研究の多くを占めるeffortに外来DNAのコンタミ除去がある。その技術を確立するまでは、貴重なネアンデルタールの化石に手を付けず、退屈なサンプル(同年代のホラアナグマ化石)で徹底的にやる。 人となり サイエンスには関係ない。Svanteはバイセクシュアル。おそらく大柄のがっしりとした男性が好みだろうことは本文から容易に推測できる。もちろん(男ほどではないが)女もいけるので、同僚の妻を寝取って自分の妻としている。50歳になっての新婚旅行ではハワイの海岸で夫婦全裸で原人のように数日過ごした際が詳細に描かれている。 他者による後書きにもあるように、Svanteは「ズルをすることなく」真摯に科学をすることでここまで達した。
by sugirioblog
| 2015-12-09 06:50
| 読書
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