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2013年 06月 24日
癌幹細胞。Cancer stem cellやtumor-initiating cellと呼ばれる。癌の中の一部の細胞を免疫不全マウスにうつと癌ができる。実験的にtumor-initiating cellを分離して癌化能を示した有名な論文はJohn Dickのこれ。AMLの細胞がtumor-initiating cellとtumor-Non-initiating cellに分けられる。後にAMLだけでなくいろいろなタイプの癌でも似た実験がされてtumor-initiating cellが示された。
幹細胞屋さんが他の分野の研究者(とくに癌を研究する人)と話すときによく火花が散る話題のひとつ。 ここでは4つの議論に分けたい。まず無用な混乱を防ぐため、tumor-initiating cellと一括して呼ぶことにする。 1. tumor-initiating cellの定義。 tumor-initiating cellの定義は2006年にAACRによって決められたように「自己複製し、癌を作る細胞」。すなわち、実験的に免疫不全マウスにうつと癌を再構成できた細胞集団のみに適用される用語だ。このtumor-initiating cellの定義は感染症におけるコッホの原則に非常に似ている。 自己複製は(同じマーカーの細胞集団をとってきて)2次移植によって癌をつくるかで確認される。必ずしも増殖能が高いことと相関しない。そしてvitroでのスフェア形成能は実際の自己複製能と単なる増殖能を区別するものではない。スフェア形成能を自己複製と思い込んでしまうと、vivoでの自己複製能との乖離をみることになる。この論文のように。こんなハイレベルな雑誌でも思い違いをしているのだから、この分野はかなりカオスなことになっているかもしれない。 2.tumor-initiating cellの起源。 tumor-initiating cellは実験的に免疫不全マウスにうつと癌を再構成できた細胞集団であって、それ以上でもそれ以下でもない。その由来に関してはノータッチである。実験的に幹細胞に変異をおこしてtumor-initiating cellを作る論文はいっぱいあるけど、実際の患者のtumor-initiating cellの由来は何であれ、実験的に癌を再構成できた細胞集団がtumor-initiating cellと呼ばれる。すなわちこの論文のように、分化した細胞が変異の蓄積によって幹細胞様の性質をもった場合もある。 3.変幻自在なtumor-initiating cell。 癌組織内で変異、選択がおこりtumor-initiating cellができてくるというclonal evolutionモデルがある。このclonal evolutionモデルは(起源が幹細胞と思い込んだ場合に)tumor-initiating cellモデルと2律背反のように言われることもある。最近はJohn Dickにより折衷案が提唱されている(図4)。つまり由来が何であれ、変異、選択によりその時その時でtumor-initiating cellの顔は違う。特に抗癌剤でたたいて生き残った細胞は精鋭であり、強力なtumor-initiating cellとなり再発を引き起こす。実際の患者でも数年間追跡すると再発を起こす細胞の遺伝型やマーカーが異なってくることは知られている。 また、benignな腫瘍の段階に比べて非常に進行したmalignantな段階ではtumor-initiating cellの数とタチの悪さは増大すると思われる。また、何代にも継代された癌細胞株ではtumor-initiating cellの割合が増えるのだろうか。よって、tumor-initiating cellは幹細胞のようにレアな集団というよりは、癌の進行度にあわせて素性も数も変わるダイナミックな機能集団のようだ。 4.治療について。 tumor-initiating cell研究のゴールとして当然治療がある。tumor-initiating cellを叩くと治療に役立つだろうというコンセプトで研究がされている。先のダイナミックなモデルを思い出すと、tumor-initiating cellは抗癌剤の選択に生き残ったエリートで、再発の原因になる。geneticモデルを使ってtumor-initiating cellをたたく+抗癌剤併用がプロミシングかもしれないという論文がある。結局(このgeneticモデル特有の問題のため)生存率が改善されてないのは残念だが、tumor-initiating cellをたたく薬剤と抗癌剤の併用という方向で研究が進んでいる。 これらの議論はCraig Jordanのコメンタリーによって的確にカバーされている。 追記 再発細胞の文献を追加して、それにともない表現を訂正。
by sugirioblog
| 2013-06-24 09:01
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